温熱と構造

A.環境のこと

一口に環境と言っても、建築にはいくつもの要素がありますが、当事務所では、大きく分けて次の4つの要点があると考えています。

①温熱環境、②採光と照明、③緑について、④建築音響

ここではそれぞれについて、設計者としての理解や考え、さらには●提案についても書いておきたいと思います。
(ただあえて●をつけた提案については、予算の問題もありますので、それを設計の前提としているわけではないことを、ここにお伝えしておきます。)

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①温熱環境:大きくは学問的に建築気候と呼ばれる内容の一つです。
これについては、まずは国の政策としてのCO2をめぐる問題とかも含め、現在ではいろいろなの話題が出てきています。ただ現状の建築の場合では簡単に「省エネ」と言ってもよいかもしれません。大きくは地球環境の問題となりますが、民間の仕事がほとんどの当事務所としては、それの具体的な問題として「高気密・高断熱」の仕様について考えたいと思っています。

●提案すること「住まいは冬を旨とすべし」:高気密・高断熱の住まい
省エネルギーも大事なことですが、私にとってはそれよりも、その結果として実現される住環境が、それ以前にすばらしいと考えています。それを一言でいえば「恒温環境」ということになります。家中の温度がある程度一定になり、浴室やトイレまた台所などで寒い思いをされることなく、温度の急激な変化で生じる事故や病気も大幅に減らすことができます。これが高齢者にやさしいといわれる所以です。

そしてそれが理想の近くにまで実現されるとどうなるか。家の中全体が同じ温度になってきます。家全体と言いますのは、室温以外にも、床や壁、天井などの建築物はもちろん、テレビなどの家電製品や家具にいたるまで、全ての物が同じ温度になってくるということで、物体からのふく射熱による寒さや熱さの影響がなくなってしまいます。これはつまりは夏であれ冬であれ、室内の環境が、そのときの室温が過ごしやすい季節(春秋)の外気温と同じような状態になるということです。建築内部の気候が、局所暖房や空気の温度を上げるような暖房によるのとはまったく違う形となり、例えば窓の外には雪が降っているのに軽装でいて、それがあまりに普通の状態なので、外出時にコートを忘れ、しばらく歩き始めてから、あわてて引き返すというようなことも実際に起こります。

徒然草に書かれた「住まいは夏を旨とすべし」とは、日本の夏の過ごしにくさを念頭にした言葉ですが、時代は移り、冷房が普及してきた現在、昔のように通気性に頼って湿気や熱気に対処する方法では、もはや単なる「やせがまん」にすぎなくなっています。体力や抵抗力の弱い高齢者が増えつつあるこれからは、人工的な温熱空間を安くて快適な環境にすることが重要で、「住まいは冬を旨とすべし」というのが今や本当ではないかと考える次第です(もちろん沖縄となればまた異なるでしょう)。

②採光と照明

建築におけるガラスの断熱や遮熱の問題については①にゆずり、ここでは自然光を含む光と照明の問題について書いてみます。照明器具もLEDが普及してからは私が若いころとはかなり変ってきました。電気代が大幅に下がると同時に、光色や明るさもかなり自由に決めることが可能になってきています。そして「光」は、空間におけるとても重要な問題の一つです。われわれ空間デザイナーとしても、自然採光はもとより、夜の景色や窓が少ない空間のための照明デザインも重要な要素です。

当事務所では住宅はもとより集合住宅も含め、基本的に照明計画も設計内容に含めています。ただLEDが出てからは、毎年、仕様や機能も大きく変わったりしてきて、●照明デザイナーに入って頂くことも増えてきました。「About us」の関連リンクで「RISE」をご覧ください。

③緑について

住宅の場合、内部空間を考えるときには窓からの景色も重要です。実際、建物が竣工寸前の段階で、内部では設計した●造作家具が入り、外部には植栽が入るのですが、本当にそれで内部空間も一気に変貌してしまいます。造園計画は、プランの段階である程度はすでに考えています。窓の景色で内部空間自身も大きく変ってしまうことを知っているからです。私は、造園のプロではありませんが、いつも造園会社との共同作業で庭造りをしています。ですので設計内容として●植栽造園計画まで含めて頂くのがほとんどです。

④建築音響について

内容としては「騒音防止」と「室内音響」という大きく分けて二つの分野があります。ただ音についての問題は、設計するには、かなりシビアで難しい内容が多いと思います。ただ「騒音防止」についてはそれほどシビアな内容に関わったことはまだありませんが、「室内音響」は主として音楽をきれいに聴くためのほかに、大音量で聴いても外に出さないという場合もよくあり、それについては何回か仕事の一部としてやったことがあります。その場合は●経験を積んだ外部業者との共同作業となります。


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